決算サマリー
味の素株式会社の2025年3月期連結業績は、売上高および事業利益において過去最高を更新しました。一方で、親会社の所有者に帰属する当期利益は、事業再編に伴う一時的な損失により減益となりました。
- 売上高:1兆5,305億円(前年同期比 +6.3%)
- 事業利益:1,593億円(前年同期比 +7.9%)
- 親会社の所有者に帰属する当期利益:702億円(前年同期比 △19.3%)
※「事業利益」とは、売上高から売上原価、販売費、研究開発費、一般管理費を控除し、持分法による損益を加えた、同社独自の恒常的な業績を測る指標です。
注目ポイント
今決算の最大の注目点は、「アミノサイエンス」を核とした事業ポートフォリオの進化です。半導体パッケージ用材料(ABF)を含む電子材料が大幅な増収増益を達成し、収益の柱として存在感を高めています。また、不採算の受託製造事業(アルテア社)の売却を決定し、一方で次世代の遺伝子治療薬CDMOであるフォージ社を取得するなど、成長領域への資源配分を加速させています。
業界動向
食品業界全体では原材料価格の高騰や物流コストの上昇が続いていますが、同社はグローバルでの価格改定や高付加価値製品へのシフトにより、コスト増を跳ね返す力を示しています。特に半導体材料分野においては、データセンターやAI需要の拡大を背景に、競合他社を上回る成長を維持しています。
投資判断材料
長期投資家にとっての注目材料は、資本効率の向上と株主還元の強化です。同社は「累進配当政策」(減配せず配当を維持または増やす方針)を掲げ、2025年4月1日付で実施した1株から2株への株式分割後も実質的な増配を継続する方針です。ROIC(投下資本利益率)の改善にも意欲的であり、稼ぐ力の強化が期待されます。
セグメント別業績
- 調味料・食品:売上高 8,960億円(+5.8%)、事業利益 1,139億円(+2.2%)。海外での販売増と価格改定が寄与。
- 冷凍食品:売上高 2,893億円(+2.7%)、事業利益 80億円(△16.0%)。日本国内の原材料コスト増が利益を圧迫。
- ヘルスケア等:売上高 3,283億円(+11.5%)、事業利益 317億円(+30.4%)。電子材料が牽引し、大幅増益。
財務健全性
親会社所有者帰属持分比率は43.4%と、前年の46.1%から微減しましたが、依然として安定した水準を維持しています。新たな財務指標として「ネット有利子負債/EBITDA倍率」を導入し、2.0倍未満をターゲットとする規律ある投資と財務のバランスを追求しています。
配当・株主還元
2025年3月期の年間配当は1株当たり80円(分割前ベース)と、前期比6円の増配となりました。また、次期(2026年3月期)は分割後ベースで48円(分割前換算で96円)と大幅な増配を予定しています。さらに、1,000億円規模の自己株式取得を発表しており、総還元性向は50%以上を目標としています。
通期業績予想
2026年3月期の通期予想は以下の通りです。
- 売上高:1兆6,180億円(+5.7%)
- 事業利益:1,800億円(+13.0%)
- 当期利益:1,200億円(+70.8%)
不採算事業の整理が完了し、本業の収益性が一段と高まる見通しです。
中長期成長戦略
「2030ロードマップ」に基づき、ヘルスケア、フード&ウェルネス、ICT、グリーンの4つの成長領域に注力。2030年度までにEPS(1株当たり利益)を2022年度比で約3倍にする高い目標を掲げています。特にバイオ技術を活かした新規事業の創出に注力しています。
リスク要因
主要なリスクとして以下の点が挙げられます。
- 為替変動:売上の海外比率が高いため、円高局面では円換算の利益が減少。
- 原材料・エネルギー価格:農産物や原燃料の価格変動によるコスト増リスク。
- 地政学リスク:米中関係の悪化によるサプライチェーンや販売への影響。
ESG・サステナビリティ
「2030年までに環境負荷を50%削減」「10億人の健康寿命を延伸」の2つのアウトカムを掲げています。温室効果ガス削減(SBT認定取得)や、プラスチック廃棄物ゼロ化への取り組みなど、ESG投資の対象としても高い評価を得ています。
経営陣コメント
中村社長は、ASV(味の素グループ・シェアード・バリュー)経営の進化を強調しており、「アミノサイエンスで、人・社会・地球のWell-beingに貢献する」というパーパスの実現と、経済価値の創出を両立させる姿勢を明確にしています。
バリュエーション
実績PER(株価収益率)は、一時的損失による利益圧縮の影響で42.4倍と高めに出ていますが、次期の回復予想ベースで見れば、成長期待を反映した水準にあります。PBR(株価純資産倍率)やROE(自己資本利益率)を重視する経営への転換が進んでいます。
過去決算との比較
直近4年間、売上高と事業利益は右肩上がりで推移しており、成長トレンドにあります。特に今期、営業活動によるキャッシュフローが2,000億円を超え、投資と還元の原資となるキャッシュ創出力が一段と強化されている点が特徴的です。
市場の評判
味の素株式会社 (2802) has a stable financial performance with consistent growth in sales and earnings. It offers stock incentives including food products. The stock is listed on the Tokyo Stock Exchange and has a PBR of 4.48.
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味の素株式会社(2802)リサーチレポート
1. 最新の業績動向と今後の見通し
- 2025年3月期決算: 味の素の2025年3月期の連結決算は、売上高が1兆5305億5600万円(前年比6.3%増)、事業利益が1593億200万円(前年比7.9%増)となりました。親会社の所有者に帰属する当期利益は702億7200万円(前年比19.3%減)となりました。
- 2025年3月期第2四半期決算: 2025年3月期第2四半期(中間期)の連結業績は、売上高が7442億5000万円(前年同期比8.2%増)、事業利益が869億500万円(前年同期比13.5%増)、親会社の所有者に帰属する中間利益は502億2700万円(前年同期比8.1%増)でした。
- 業績予想の修正: 2024年11月7日に、2025年3月期の通期連結業績予想が修正され、売上高は前回予想から55億円引き上げられ1兆5325億円となりました。
- アナリストの見解: アナリストのコンセンサス評価は「買い」がやや強く、平均目標株価は約4220円~4450円程度と見られています。これは現在の株価(約3300円台)に対し約20~30%の上昇余地があるという予想です. ただし、日系大手証券は目標株価を4,000円に引き下げています。
2. 業界内での競合ポジションと市場シェア
- 主要な競合他社: 味の素の競合他社には、日清食品、キッコーマン、キューピー、ネスレなどが挙げられます。
- 市場シェア: 味の素は調味料で国内トップシェアを誇ります。海外展開も同業他社に先行しており、130以上の国や地域で商品を販売しています。2012年度の海外売上高比率は40%でした。
- 競合他社との違い: 味の素は半導体材料開発や医薬品開発受託も行っており、事業の多角的な経営が強みです。
3. 成長戦略と重点投資分野
- 中期ASV経営: 味の素は、従来の中期経営計画を廃止し、ASV(Ajinomoto Group Shared Value:事業を通じた社会価値と事業価値の共創)指標による中期ASV経営へ移行しました。
- 重点投資分野: 成長性の高い4事業に資源を集中し、持続的な成長を目指しています。
- M&A戦略: M&Aにも意欲的で、米国ウィンザー社の買収を通じて、全米をカバーする生産拠点を手に入れ、より効率的な供給体制を構築しています。また、ジーンデザイン社を買収し、核酸医薬品の製造受託(CDMO)分野での競争力を強化しようとしています。
4. リスク要因と課題
- 短期的なリスク要因: 第2四半期の決算発表を受けて一時ストップ安水準まで株価が下落したことが確認されています。7~9月期の最終利益が約28%減少したことに対する失望売りが強まった結果でした。
- マクロ的なリスク: 世界的な株式市場全体が弱い局面では、味の素株も同様に売られる傾向があります。
- 事業上のリスク: 新型コロナウイルス感染症のパンデミックは極めて重要な経営リスクの一つと認識されています。
- 買収した子会社等の事業計画未達リスク。
- 為替変動リスク。
5. アナリストの評価と目標株価
- アナリストのレーティング: アナリスト判断(コンセンサス)は「買い」です。内訳は、強気買い、買い、中立となっています。
- 目標株価: アナリストの平均目標株価は4,221円で、株価はあと27.22%上昇すると予想されています。ただし、証券会社によっては目標株価を引き下げているところもあります。
6. 最近の重要ニュースやイベント
- 味の素アルテア社の売却: 米子会社の味の素アルテアを米Packaging Coordinatorsに売却しました。
- 米国ウィンザー社の買収。
- ジーンデザイン社の買収。
- 中期経営計画の廃止。
7. ESG・サステナビリティへの取り組み
- ESGファイナンス・アワード・ジャパンで金賞を受賞: 「ESGファイナンス・アワード・ジャパン」環境サステナブル企業部門で金賞を2年連続で受賞しました。
- 環境負荷50%削減目標: 2030年までに「環境負荷50%削減」「10億人の健康寿命の延伸」を両立して実現し、持続可能なフードシステムに貢献することを目指しています。
- アミノ酸発酵副生物を活用したバイオリサイクルを実施。
- サステナビリティ諮問会議を設置。
- 環境変化への適応と自然の再生に向けた対策を推進。
8. 配当政策と株主還元
- 累進配当政策: 累進配当政策を導入しており、業績が一時的に悪化した場合でも減配せず、利益成長に伴い増配または維持する方針です。
- 配当金: 2026年3月期の1株当たり配当金(会社予想)は48.00円、配当利回り(会社予想)は1.45%です。
- 自社株買い: 過去に1,000億円の自社株買いを実施。
- 株式分割: 2025年4月1日付で普通株式1株につき2株の株式分割を行っています。